この記事では、近年世界的なブームを起こしているアイリッシュウイスキーのおすすめ銘柄を紹介しています。
アイリッシュウイスキーの特徴や豆知識も載せているので、よろしければ参考にしてみてくださいね!
アイリッシュウイスキーとは
アイリッシュウイスキー(Irish whiskey)はアイルランド共和国と北アイルランドで造られるウイスキーの名称。世界五大ウイスキーの1つとしても知られています。
ジャパニーズウイスキー(Japanese whisky)やスコッチウイスキー(Scotch whisky)と違い、英語だとwhiskeyという表記を用いるのが特徴。
理由については様々な説がありますが、スコッチとの差別化のために多くのアイリッシュウイスキー蒸留所がkeyにしたという説が有力です。
バーボンで有名なアメリカンウイスキー(American whiskey)はアイルランドからの移住者が作った蒸留所が多いため、アイリッシュと同じくwhiskey表記が使われています。
スコッチウイスキーとアイリッシュウイスキーが同じ物だと思っている人も多いですが、2つは全くの別物。スコッチウイスキーはスコットランドで作られるウイスキー、アイリッシュウイスキーはアイルランドで作られるウイスキーを指します。
スコッチにはアイラ島で作られるアイラウイスキーと呼ばれる物が存在するため、そのアイラウイスキーとアイリッシュウイスキーを間違える人が多い印象です。
全盛期はスコッチを超え世界最大の生産量を誇っていたアイリッシュウイスキー。しかし、時代とともに人気は低迷。200以上あったとされる蒸留所のほとんどが閉鎖し、一時はミドルトン蒸留所、ブッシュミルズ蒸留所の2つまで縮小。
そんな厳しい状態でしたが、多くの閉鎖蒸留所の銘柄を上記2つの蒸留所が引き継ぎ生産することによってアイリッシュウイスキーの伝統を守り抜きました。
今でもリニューアルされた新ミドルトン蒸留所で引き続き生産されている銘柄が多いです。しかし、近年はアイリッシュウイスキーブームの影響で新鋭のクラフト蒸留所が増加。見事に再興を果たし、数年前までアイルランド内に4つしかなかった蒸留所数は現在40を超えています。
アイリッシュウイスキーの定義・条件
アイリッシュウイスキーを名乗るためには上記6つの条件を満たす必要があります。
おおよそスコッチウイスキーの条件定義と同じですが、大きく違う点が1つ。それは木製の樽に詰めて熟成をおこなうという部分。
スコッチウイスキーではオーク(ブナ科コナラ属の落葉樹)という木材を利用した樽で熟成をおこなうことがスコッチを名乗る条件に含まれています。
しかし、アイリッシュウイスキーは木製の樽であればオークを材料にしなくてもOK。
そういった理由から、幅広い素材の木製樽で熟成された原酒を楽しめるのがアイリッシュウイスキーの面白い点の1つです。
アイリッシュウイスキーの味の特徴
アイリッシュウイスキー最大の特徴はスムースでライト、非常に飲みやすいという点です。
アイリッシュウイスキーは伝統的に3回蒸留をおこなっている蒸留所がほとんど。ウイスキーは蒸留の回数が増えるほどに、雑味が減ってサラサラと軽いライトなボディになります。
スコッチウイスキーもローランド地方で作られるローランドウイスキーだけは一部3回蒸留をおこなっていますが、3回蒸留が基本になっているのは世界五大ウイスキーの中でもアイリッシュウイスキーだけの特徴です。
そしてアイリッシュウイスキーはノンピートが基本となっており、ピート(泥炭)のスモーキーな風味がないフルーティな味わいの銘柄が大半を占める点も特徴の1つ。
アイリッシュウイスキーはそのなめらかでフルーティな味わいを活かし、カクテルの材料としても良く使われています。
その中でも代表的なカクテルがアイリッシュコーヒー。
アイリッシュウイスキーの他にコーヒー、生クリーム、そこにお好みでシュガーシロップやシナモンなどを使った世界的に有名なカクテルの名称です。
本格的に作ろうとすると非常に手間がかかるため、日本のバーではあまり見かけることがないですが、コーヒーが苦手な人でも飲めるまろやかでクリーミーな味わいが特徴のカクテルです。
アイリッシュコーヒーによく使われるウイスキーの銘柄としては「ジェムソン」。コスパの良いウイスキーなので、気になる方は一度チャレンジしてみるのも面白いかもしれません。
アイリッシュウイスキーの種類
アイリッシュウイスキーは大きく分けて4種類のタイプに分類されます。
それは下記。
- ポットスチルウイスキー
- モルトウイスキー
- グレーンウイスキー
- ブレンデッドウイスキー
下3つに関してはどこの国のウイスキーにもある種類。しかし、ポットスチルウイスキーはアイリッシュのみに存在する特殊なタイプです。
これから異なる4タイプのウイスキーの特徴や原材料、製造方法を簡単に紹介していきます。
ポットスチルウイスキー
ポットスチルウイスキーは2014年にIWA(アイリッシュウイスキー協会)によって正式に認められた、アイリッシュのみに存在する特別なタイプのウイスキー。未発芽の大麦をブレンドして使用するのが特徴です。
ポットスチルウイスキーを名乗るためには上記画像3つの条件をすべて満たす必要があります。(ポットスチルウイスキーは基本3回蒸留。でも2回でも名乗ることは可能)
条件の中で注目すべき点が1つ、それはポットスチルウイスキーを名乗るためにはオーク樽で熟成をおこなう必要があるという部分。アイリッシュウイスキー自体は木製の樽ならOKという定義ですが、ポットスチルウイスキーに関してはオーク樽での熟成が必須です。
もともとはアイリッシュウイスキー最大の蒸留所、ミドルトン蒸留所が独自に作り上げたタイプのウイスキーでした。しかし、IWAから正式に認められた現在では他の蒸留所もポットスチルウイスキーの生産をおこなっています。
ポットスチルウイスキーの味の特徴は、穀物の香ばしさと芳醇な麦のクリーミーさが混ざり合うオイリーでまろやかな風味。これは大麦麦芽(モルト)と未発芽の大麦のブレンドによって生まれる、他のタイプのウイスキーにはない味わいです。
ちなみに、同じ蒸留所で作られた原酒のみでポットスチルウイスキーが作られた場合、シングルポットスチルウイスキーという名称になります。
モルトウイスキー
モルトウイスキーは大麦麦芽(モルト)のみを原材料にして作られたウイスキー。
原酒の蒸留には単式蒸留器(ポットスチル)が使用されており、蒸留回数は2〜3回となっています。
モルトウイスキーを名乗るためには、モルト以外の原材料を使用できない制限があるため、ウイスキーの中でも高級品として扱われることが多いです。
1つの蒸留所のモルト原酒のみでモルトウイスキーが作られた場合、ボトルにシングルモルトウイスキーという表記をすることができ、さらに希少価値が高まります。
グレーンウイスキー
グレーンウイスキーは穀物(トウモロコシ、小麦、ライ麦など)を主な原材料として作られるウイスキー。
原酒の蒸留には連続式蒸留器(コラムスチル)が使用されており、大量生産に適したコスパの良いタイプのウイスキーです。
グレーンウイスキーとしてボトリング販売されることは少なく、基本的にはブレンデッドウイスキーの材料として消費されることがほとんど。
しかしグレーンウイスキーを好む愛好家も多く、モルトウイスキーを上回る価格で販売されている銘柄も多く存在します。
1つの蒸留所のグレーン原酒のみでグレーンウイスキーが作られた場合、ボトルにシングルグレーンウイスキーと表記することが可能です。
ブレンデッドウイスキー
ブレンデッドウイスキーは、モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドして作られるウイスキー。
ブレンドの過程で味の調整がしやすく、生産コストが低いグレーン原酒が使われているためコスパも良し。そういった事情もあり、全世界でもっとも売れているタイプのウイスキーがこのブレンデッドウイスキーです。
アイリッシュウイスキーのおすすめ銘柄
アイリッシュウイスキーのおすすめ銘柄をランキング順でご紹介。
当然著者の好みも含まれるので、参考程度に見ていただけると幸いです。
順位は味わい、飲みやすさ、コスパ、入手しやすさの4つの項目を基準に付けています。
1位:ライターズ ティアーズ
「ライターズ ティアーズ」はウォルシュ・ウイスキー蒸留所で作られたブレンデッドウイスキー。
表記的にはブレンデッドウイスキーになりますが、実際にはシングルモルトとシングルポットスチルウイスキーをブレンドさせた珍しい1本です。
蒸留回数は3回。熟成にはバーボン樽が使用されており、甘くなめらかな味わいが特徴。
香りは柑橘系のフレッシュな香味と酸味、りんご、木の皮。嫌なアルコール香は感じません。
口触りはオイリーで甘さひかえめ、ほんのり苦味はあるものの、スパイスの刺激も薄くまろやか、優しい感触のウイスキーです。
味わいは落ち着いた蜜感にすり潰したりんごや洋梨、後味から余韻にかけてウッディな香木の風味もあります。
アイリッシュウイスキーの中でもかなり飲みやすく、ハイボールとの相性も抜群。非常に美味しい1本です。
日本ではまだ知名度がないこともあり、実店舗で見かけることはほとんどありません。興味を持った方はAmazonなどのネットショップをチェックしてみてくださいね!
2位:グリーンスポット
「グリーンスポット」はアイルランドで最も有名な蒸留所、ミドルトン蒸留所で生産されているシングルポットスチルウイスキー。
蒸留回数は3回。ボトルの表記はノンエイジですが、7〜12年熟成の元酒をヴァッティングして作られたウイスキーとなっています。
グリーンスポットに使われている原酒はバーボン樽原酒、シェリー樽原酒、マラガ樽原酒の3種類。
マラガ樽はスペインの都市マラガで作られている甘口酒精強化ワインの空き樽で熟成された原酒になります。
ボトリングされるのは毎年数量限定で年に約24,000本ほど。アイリッシュウイスキーの人気が近年高まっていることもあり、貴重なウイスキーでアイリッシュウイスキー愛好家からも非常に評価が高い1本です。
香りはトロピカルフルーツ、洋ナシ、ベリーなどの甘くフルーティな香り。ほんのりバーボン特有の接着剤に似た香味もありますが、嫌な若いアルコール香は一切ありません。
口触りは甘さ強めでオイリー。フレッシュな蜜感と暖かな感触、程よいスパイス感と後味になるにつれジワジワと現れる軽い苦味が非常に心地よいです。
3位:バスカー
「バスカー」はロイヤルオーク蒸留所で作られたブレンデッドウイスキー。
ロイヤルオーク蒸留所は2016年に稼働開始されたかなり新しい蒸留所ですが、シングルモルト、シングルポットスチル、シングルグレーンすべての生産が出来るアイルランド唯一のウイスキー蒸留所です。
今回紹介しているバスカーもシングルモルト原酒、シングルポットスチル原酒、シングルグレーン原酒の3種類をブレンドして作られており、熟成樽にはバーボン樽、シェリー樽、マルサラワイン樽が使用されています。
香りはアイリッシュ特有のトロピカルフルーツ、ローズマリーなどのハーブを彷彿とさせるスパイシーな香味。
味わいはぶどうとレーズンの中間のようなフルーティな味わいが主体。嫌なアルコール味は感じず、まろやかで優しい味わいが特徴。
日本では2021年の10月に発売開始されたばかりということもあり、実店舗ではまだ扱っていない店舗が多い印象です。
今後は販売店舗も少しずつ増えていくと思われますが、早めに飲んでみたいという方はAmazonなどのネットショップで購入するのをおすすめします。
4位:アイリッシュマン シングルモルト
「アイリッシュマン」はウォルシュ・ウイスキー蒸留所で生産されているシングルモルトウイスキー。1位で紹介した「ライターズ ティアーズ」と同じ蒸留所が生産しているウイスキーになります。
ライターズ ティアーズがブレンデッドウイスキーに対し、こちらのアイリッシュマンはシングルモルト。
3回蒸留されたモルト原酒をバーボン樽とシェリー樽で熟成(熟成年数は非公開)。それらのモルト原酒をヴァッティングして作られた1本がこのアイリッシュマン シングルモルトです。
生産者側が1バッチ6,000本までという制限をつけてボトリングしており、バッチによって風味に多少の変化があるウイスキーと言われています。
香りは熟した桃や洋梨、癖のない甘い蜜、ほんのり柑橘系のスッキリとした香味。
口触りは意外とオイリーで甘さ強め。洋梨やりんごのフルーティな風味にフローラルな蜜、そこにビスケットに似たお菓子のような味わいが混ざり合うのが特徴です。
アイリッシュマンシリーズのラインナップに「アイリッシュマン カスクストレングス」という商品も存在しますが、そちらとは製法・樽構成・度数すべてが違うため注意。上記のカスクストレングス版はアルコールの刺激が強く、甘くのっぺりとした羊羹のような風味で個人的には苦手でした。
5位:レッドブレスト12年
「レッドブレスト12年」はミドルトン蒸留所で生産されているシングルポットスチルウイスキー。
レッドブレストシリーズのラインナップで最も熟成年数が若く、価格も安いのがこの12年です。
ミドルトン蒸留所の所在地であるマンスター地方で取れた大麦のみを原材料に使用、仕込みに使われる水も蒸留所の近くを流れるダンガーニー川のものを使用しています。
蒸留回数は3回。熟成にはシェリー樽とバーボン樽が使用されており、スパイシーかつ芳醇なアロマが特徴。
香りはトーストを彷彿とさせる芳醇な麦にほんのりシナモンやレーズン。
口触りは滑らか、味わいはクリーミーなバニラとモルトの風味が目立ちます。
アメリカンウイスキーのバーボンに似た味わいをしており、バーボン特有の接着剤のような風味をほんのりと感じるのが特徴。
度数が高いウイスキーを飲み慣れている方は、価格はだいぶ上がってしまうものの濃厚な味わいの「レッドブレスト12年 カスクストレングス」のほうを個人的におすすめします。
6位:グレンダロウ(グレンダロッホ)13年 シングルモルト
「グレンダロウ13年」はグレンダロウ蒸留所で作られているシングルモルトウイスキー。
日本ではグレンダロッホという名称で用いられることもありますが、呼び方が違うだけで同じウイスキーのことを指します。
グレンダロウ蒸留所は2013年に創立された従業員わずか5人のクラフト蒸留所。
アイリッシュウイスキーの人気が再興したころに作られた新参の蒸留所で、アイルランド公認クラフト・ディスティラリー第1号という名誉な称号を持っています。
創立から8年で13年熟成の原酒を所持している点は不明ですが、「グレンダロウ13年 ミズナラ」などを販売していることから、現時点では他の蒸留所から買った原酒をグレンダロウ蒸留所内で熟成しているものと考えられます。
(私が知るかぎり、ジャパニーズウイスキー以外でミズナラ樽が使われているのはシーバスリーガルとグレンダロウのみ)
グレンダロウ13年シングルモルトは100%アイルランド産大麦麦芽(モルト)を原料に蒸留回数2回、ファーストフィルのバーボン樽原酒のみを使用。ボトルの価格は高いものの、高品質な1本です。
香りは甘塩っぱいみたらし醤油、柑橘系のスッキリとした酸味、ほんのりワクシーな蜜蝋。のっぺりとした香りで少しクセはありますが、嫌なアルコール香は感じません。
口触りは重みがあってオイリー、ほんのり粉っぽい感触があり、甘さ・スパイス感どちらも強め、時間経過につれて心地よいドライな苦味もあり。
味わいとしては甘い蜜感とほんのり出汁や醤油の和風な風味。アルコールの味も多少感じますが、飲み応えのあるパワフルな味わいで美味しいです。
7位:ランベイ スモールバッチブレンド
「ランベイ スモールバッチブレンド」は、アイルランドの島(ランベイ島)を個人で所有するほどの由緒ある貴族「ベアリング卿」と、コニャックで有名なカミュ社が共同で製作したブレンデッドウイスキー。生産販売の社名は通称ランベイ社。
ランベイ社はウイスキーの蒸留所を自社で所有していないこともあり、熟成やボトリングはウエストコーク蒸留所でおこなわれています。
今回紹介しているランベイ スモールバッチブレンドはランベイシリーズの中で最も価格が安く、エントリーモデルと言われる1本。
蒸留回数は3回。ウエストコーク蒸留所を含む3つの蒸留所の原酒がブレンドされており、バーボン樽で4年以上熟成された後、カミュ社が所有する40年物の高級コニャック樽で1か月間後熟されています。
香りはシトラスの酸味、ブラックペッパーなどのスパイスにグレーン由来の甘い穀物香。
味わいはスムースでドライ。なめらかで優しい口触りにコニャック由来の大人な苦味が混ざり合います。
ブレンドの比率がモルト3に対しグレーン7ということで、グレーンウイスキー感が非常に強い印象を受ける1本。
個人的には、ストレートやロックよりもハイボールと相性が良いのではないかと思います。
ランベイは日本での知名度がまだ低く、販売している店舗が少ないです。しかし、本場アイルランドを含む海外諸国での人気は非常に高く、有名なコンペティションで金賞メダルを受賞するほど。
気になる方は是非Amazonなどで購入してみてくださいね。
8位:ア・ドロップ・オブ・ジ・アイリッシュ8年
「ア・ドロップ・オブ・ジ・アイリッシュ8年」はウイスキーのボトラーズ業者、ブラッカダー社が生産している蒸留所非公開のシングルモルトウイスキー。
熟成にはファーストフィルのバーボン樽が使用されています。
ノンチルフィルター・ノンカラー・カスクストレングスでボトリングされており、樽で熟成された原酒そのものの味わいを楽しむことが出来る1本です。
香りはパイナップル、チョコレート、ほんのりコーヒー。アルコール58%と非常に高いため、スッキリとしたアルコール香を少し感じますがそこまで嫌な気はしません。
口触りはオイリー感があまりなく水々しい感触。どちらかというとボディはライトですが、柑橘系の強い酸味と強烈なホットスパイスを舌に感じるパワフルな飲み口。
味わいは柑橘類に少しクリーミーな麦。後味から余韻にかけてビターチョコレートのような苦味を感じるのが特徴です。
9位:イエロースポット12年
「イエロースポット」はミドルトン蒸留所で生産されているシングルポットスチルウイスキー。
1位でご紹介したグリーンスポットの上位モデルになります。
蒸留回数は3回。使用されている原酒はグリーンスポットと同じく、バーボン樽原酒、シェリー樽原酒、マラガ樽原酒の3種類。
違いとしては熟成年数の長さと原酒のヴァッティング割合です。
香りはミルクチョコ、果実感のある酸味、ほんのりバーボンの接着剤香を感じる甘くスッキリとした香味。嫌なアルコール香は一切ありません。
口触りはかなりオイリーで甘さひかえめ、しかし時間経過につれて舌に一点集中型の甘みがジワジワとやってきます。
後味から余韻にかけてフレッシュな苦味、味わい的には蜜以外の特徴をつかめない複雑なウイスキーといった感じです。
グリーンスポットと比べるとフルーティさが少なく、個人的には甘く飲みやすいグリーンスポットの方が好みでした。
10位:ウエストコーク10年
「ウエストコーク10年」はウエストコーク蒸留所で生産されているシングルモルトウイスキー。
ウエストコーク蒸留所はアイリッシュウイスキー冬の時代と言われる2003年に創立された新興の蒸留所。モルトの香水の呼び名でスコットランド内でカルト的な人気を誇るスコッチ「スプリングバンク」の元マスターブレンダー「フランク・マッカーディ」がアドバイザーを務めています。
熟成にはバーボン樽が使用されており、香草やスパイスを強く感じるスパイシーなウイスキーです。
香りはアロエ、ハーブ、パイナップル、ほんのり柑橘系の酸味。パワフルな植物香がありますが、嫌なアルコール香は感じませんでした。
口触りはオイリーで甘さひかえめ、舌を刺激するようなスパイス感はほとんどありません。
味わいはフルーツを彷彿とさせる果実味もありますが、それ以上に香草の味わいを強く感じるアロマなウイスキー。間違いなく人を選ぶウイスキーではあるものの、ハーブ系のリキュール「アブサン」などを好む人にはかなりストライクな1本だと思います。
他にはない味わいの珍しいウイスキーで私は結構好みでした。
11位:タラモアデュー14年
「タラモアデュー14年」はミドルトン蒸留所で生産されているシングルモルトウイスキー。
世界で2番目に有名なアイリッシュウイスキーとされており、日本国内では「サントリー」が販売権を持っている銘柄です。(国内販売のラインナップはノンエイジのみなので14年は輸入品だけ)
蒸留回数は3回。バーボン樽で14年間熟成、その後にシェリー樽とマデイラワイン樽で8ヶ月間追熟されて作られています。
香りはエナジードリンク、柑橘系の酸味、ほんのりパッションフルーツなどのトロピカルフルーツ香。嫌なアルコールの匂いは全然ありません。
口触りはかなりオイリー、甘さはひかえめですが時間経過につれてジワジワと舌に残る一点集中型の甘みあり。酸味とスパイスもほどよく感じます。
味わいはりんごや洋ナシのフルーティな風味がメイン。後味から余韻にかけて少しアルコール風味を感じるものの、そこまで気になるレベルではないです。
12位:ブッシュミルズ10年
「ブッシュミルズ10年」はブッシュミルズ蒸留所で生産されているシングルモルトウイスキー。
ブッシュミルズ蒸留所は1608年に創立されたと記録されている、アイリッシュウイスキー最古の蒸留所の1つ。100%アイルランド産のノンピート麦芽を使用し3回蒸留、そんな製造スタイルを400年以上経った今でも続けている歴史ある蒸留所です。
ピート(泥炭)を含んでいないため口触りはスムースかつまろやか。誰でも飲みやすい味わいがブッシュミルズシリーズの特徴。
今回紹介しているブッシュミルズ10年は、バーボン樽で10年以上熟成されたモルト原酒のみをヴァッティングして作られています。
香りは洋ナシ、甘くフローラルな蜜、ほんのりバーボン樽由来の接着剤に似た香味。
口触りはオイリーで甘さ強め、ほどよいスパイス感が心地よいです。
味わいはフルーティで洋ナシの風味がメイン。まろやかで優しい味のウイスキーですが、後味から余韻にかけてスッキリとしたドライな感触が残ります。
13位:ジェムソン スタンダード
「ジェムソン スタンダード」はミドルトン蒸留所で生産されているブレンデッドウイスキー。
世界で最も有名なアイリッシュウイスキーであり、世界のアイリッシュウイスキー全体売上の6割以上がジェムソンと言われています。
製法は大麦、ノンピート麦芽、トウモロコシを使用し3回蒸留。なめらかでスムースな口触りが特徴です。
ジェムソン スタンダードはジェムソンシリーズの中で最もシンプルかつ安価な1本。バーボン樽とシェリー樽で7年以上熟成された原酒をブレンドして作られています。
香りは青リンゴや洋ナシ、香ばしい麦、ほんのり完熟したプルーン。ノンピートですが樽を焦がすチャーリング由来のものと思われる香ばしさが少しあり。
口触りは水っぽくまろやか、ひかえめな甘さでほどよいスパイス感もあります。
味わいはバニラ、芳醇な麦、ほんのりドライフルーツ。後味から余韻にかけて少し舌に残る苦味あり。
ストレートでも悪くないですが、どちらかというとハイボール向けのウイスキーという印象です。
14位:カネマラ オリジナル
「カネマラ」はクーリー蒸留所で生産されているピーテッドタイプのシングルモルトウイスキー。
ノンピート麦芽が基本のアイリッシュウイスキーでは珍しい異端的な銘柄で、アイリッシュ唯一のピーテッドシングルモルトとして知られています。
蒸留は2回で熟成にはバーボン樽を使用。4年熟成の原酒、6年熟成の原酒、8年熟成の原酒をヴァッティングして作られており、スモーキーかつスムースな味わいが特徴です。
香りは燻製の煙、リンゴ、干し草。
口触りはスムース、しかし後味から余韻にかけて徐々に重みが深くなっていきます。
味わいはクリーミーな麦、ハチミツ、燻した干し草、土。2回蒸留ということもあり、スコッチに似た飲みごたえのある味わいが特徴。
ピートの数値を表すフェノール値は14ppmと少ないですが、数字以上にスモーキーな風味を感じるウイスキーという印象です。
口触りは優しいものの、飲みやすさ重視でアイリッシュウイスキーを選択する人は避けたほうが良い銘柄だと思います。
15位:ティーリング シングルモルト
「ティーリング シングルモルト」はティーリング・ウイスキー蒸留所で生産されているシングルモルトウイスキー。
ティーリング・ウイスキー蒸留所が創立されたのはアイリッシュウイスキーが再興され始めた2015年。そのため現在使用されている多くの原酒はブッシュミルズ蒸留所から買い取ってティーリング蒸留所で熟成されたものと言われています。
今回紹介しているティーリングシングルモルトは2019年に発売された、いわゆるティーリングシリーズのスタンダードボトル。原酒の熟成年数は非公開となっています。
蒸留回数は3回。原酒の熟成にはシェリー樽、ポートワイン樽、マデイラワイン樽、ホワイトバーガンディ樽、カベルネソーヴィニョン樽の5つがフィニッシュ(後熟)として使用されています。(ホワイトバーガンディはフランスのブルゴーニュ地方で作られている白ワイン)
香りはチョコレート、あんこ、リンゴ、ほんのり柑橘系の酸味。甘くのっぺりとした香味でアルコールの匂いも感じます。
口触りはオイリー、甘さとスパイス感はどちらもひかえめ、舌にしっかりとした塩気もあり。
味わいはバーボン樽で熟成された原酒に多くみるフレッシュな風味やハチミツが主体。後味から余韻にかけてほんのり苦味も存在します。
ティーリングの公式テイスティングノートではフルーティな香りや味わいとのこと。しかし実際に飲んでみた感想としては、和風と洋風のお菓子が混ざり合ったウイスキーという印象です。
バーボン樽で熟成された原酒が使用されている記述はありませんが、それに似た風味を感じるのでバーボン樽で熟成された原酒を先ほど紹介した5つの樽でフィニッシュ(後熟)しているのかもしれません。
アイリッシュウイスキー おすすめの飲み方
アイリッシュウイスキーはストレート、もしくはハイボールで飲むのがおすすめです。
多くのアイリッシュウイスキーは3回蒸留をおこなっているため、スコッチやバーボンなどと比較してもスムースで優しい味わいのものがほとんど。
そのためアルコール度数40%を超える銘柄でもストレートで非常に飲みやすいです。
そしてアイリッシュウイスキーはそのスムースな飲み口から、ハイボールとの相性が抜群とも言われています。
アイリッシュウイスキーの代名詞ともなっている銘柄「ジェムソン」は公式サイト(上記画像下のリンク)でもハイボールを推奨しているほど。
いろいろな飲み方を試してアイリッシュウイスキーを楽しんでみてくださいね!
コメント