この記事ではウイスキーの熟成に使用される樽の種類、熟成に用いられるとどんな風味を付与する特徴があるのかについて解説しています。
少し長くなりますが、よろしければ参考にしてみてくださいね!
ウイスキー樽に使われる木材一覧
ウイスキー樽に使われる素材は決められており、オークという種類の木材のみで作られています。
オークはブナ科コナラ属に属する落葉樹。
日本では楢(なら)という名称で親しまれている樹木なので、オーク=楢(なら)の木から取れる木材と言ったほうが分かりやすいかもしれません。
これからウイスキー樽の製造に使われるオーク一覧を簡単に紹介していきます。
アメリカンホワイトオーク(アルバオーク)
アメリカンホワイトオークは北米に生息している落葉樹。
日本ではアメリカンホワイトオークという名称が有名ですが、海外ではアルバオークという名称が使われていることもあります。
ウイスキー樽に使われるオークは4種類存在しますが、その中で最も主流な木材がこのアメリカンホワイトオーク。ウイスキー産業で使われている樽の90%を占めていると言われています。
ヨーロピアンオーク(スパニッシュオーク)
ヨーロピアンオークはヨーロッパ全土、ハンガリーからロシアまでの広区域に生息している落葉樹。
日本ではヨーロピアンオークよりも、スパニッシュオークという名称がよく使用されていますが、どちらも同一の木材です。
ウイスキー樽に使われるオークの中でも、アメリカンホワイトオークに続いて2番目に主流な木材がこのヨーロピアンオーク。
ただし、アメリカンオークに比べると成長が遅く、密度が低いという特徴も。
そのため、ヨーロピアンオークは世界的に高級オーク材として扱われており、価格が高いことで知られています。
フレンチオーク(セシルオーク)
フレンチオークはフランスに生息する落葉樹。
日本ではフレンチオークという名称が一般的ですが、海外ではセシルオークという名称が用いられることも。
もともとはブランデーのコニャックを熟成する樽に使う木材でしたが、近年ではスコッチウイスキーの有名蒸留所、日本のウイスキー蒸留所などでウイスキーの熟成に使用されています。
まだウイスキー樽に使われるオークとしてはマイナーポジションですが、フレンチオーク自体の需要が非常に高いため、価格は非常に高価。(高級ワインやブランデーの熟成で使われているため)
ウイスキー樽としても、今後どんどん需要が増えていくと予想されている木材です。
ジャパニーズオーク(ミズナラ)
ジャパニーズオークは日本の鹿児島から北海道まで広区域に生息する落葉樹。
日本ではミズナラという名称のほうが有名ですが、海外ではジャパニーズオークという呼び方がポピュラーです。
ヨーロピアンオークと同じく、貴重な高級オーク材として知られており、日本のウイスキー蒸留所以外ではほとんど使用されていないかなりレアな木材。
ウイスキーの古樽について
これからウイスキーの熟成に使われる樽の種類を紹介していきますが、その前に古樽について簡単に解説しておきます。
古樽とは、一度ワインや蒸留酒の熟成に使用した樽を再利用した物のこと。
一度他のお酒を熟成させることによって木材の特徴が和らぎ、更には1度目に熟成されたお酒の風味を再利用する際に付与することが可能となります。
ウイスキーの熟成に使われる古樽としてメジャーなのは、バーボン樽、シェリー樽、ワイン樽。最近ではラム酒の熟成に使用されたラム樽を古樽として利用する蒸留所も増えてきています。
ウイスキー樽の種類と特徴
アメリカンホワイトオーク樽(アルバオーク樽)
アメリカンホワイトオークを使用して作られた樽。
バニリン成分(バニラの果実などに含まれる香気成分)が非常に強いのが特徴で、熟成にアメリカンホワイトオーク樽を使用すると、バニラ、ハチミツ、ココナッツ、キャラメルなどの甘い香りを原酒に付与します。
また、樽から抽出される成分とアルコールが起こす化学反応エステリーによってバナナ、リンゴ、洋梨などのフルーティな香りを生み出す可能性が高いのもアメリカンホワイトオーク樽の特徴。
ヨーロピアンオーク樽(スパニッシュオーク樽)
ヨーロピアンオークを使用して作られた樽。
タンニンの含有量が非常に多いのが特徴で、熟成にヨーロピアンオークを使用すると、ドライフルーツ、松脂、クローブなど、ほのかな渋みやスパイシーな香りを原酒に付与します。
ただし、新品のヨーロピアンオーク樽をそのままウイスキーの熟成に用いると風味が強すぎるため、シェリー酒の熟成に使用された古樽のヨーロピアンオーク樽(通称シェリー樽)として使用されることが多いです。
フレンチオーク樽(セシルオーク樽)
フレンチオークを使用して作られた樽。
アメリカンホワイトオークとヨーロピアンオークのちょうど中間みたいな風味が特徴と言われており、セシルオーク樽を熟成に使用すると、スパイシーでありながらバニラの風味も感じる繊細な香りを原酒に付与します。
ワイン界ではセシルオークとヨーロピアンオークはどちらもフレンチオークという名称で統一されていますが、ウイスキー界においてはフレンチオーク=セシルオーク単体を指すことが多いです。
ジャパニーズオーク樽(ミズナラ樽)
日本に生息するミズナラを使用して作られた樽。
香木のようなオリエンタルな香りが特徴で、ミズナラ樽を熟成に使用すると、伽羅や白檀、キャラメル、ココナッツなどの香りを原酒に付与します。
数年前までは、ミズナラ樽=サントリーの専売特許というイメージがありましたが、現在では日本のウイスキー蒸留所の多くで熟成に用いられています。
しかし、ジャパニーズウイスキー以外で使用されることはまずなく、私が知る限りミズナラ樽が熟成に用いられている海外ウイスキーは今のところ「シーバスリーガル ミズナラ」、「グレンダロッホ」の2つくらいです。
バーボン樽
バーボン樽はウイスキー製造に使われる古樽として最もポピュラーな物の1つ。
バーボンの熟成に使用した樽を再利用したものがバーボン樽。樽自体の木材はアメリカンオークを使用して作られています。
バーボンを製造するルールとして、ファーストフィルのアメリカンホワイトオーク樽を使用しなくてはいけないという規定があるため、アメリカンホワイトオーク以外の樽や、セカンドフィル以降のホワイトオーク樽で作られた場合はバーボンを名乗ることができません。
バーボンの熟成に使用する樽は、樽の内側を焦がすチャーという工程がおこなわれており、どの程度焦がすかによって原酒に付与する香りが変化すると言われています。
バーボン樽としてウイスキーの熟成に再利用された際には、甘くクリーミーなバニラ、カラメル、場合によってはほんのり接着剤の風味などが原酒に付与されます。
シェリー樽
シェリー樽は世界3大酒精ワインの1つとして数えられる、シェリー酒の熟成に使用した樽。
シェリー樽はウイスキー製造に使われる古樽としても非常に人気。
多くの場合、木材はヨーロピアンオークを使われて作られていますが、中にはアメリカンホワイトオークで作られたシェリー樽も存在します。
もともとはシェリー酒を作っているワイナリーに使い終わって空になった樽を販売してもらうのが定番でしたが、シェリー原酒を使ったウイスキーの強い人気から需要と供給が合わずシェリー樽が不足。
今ではスペインのワイナリーがウイスキーを熟成するためのシェリー樽をあえて作成、販売しているのが現状です。
そのため価格・希少価値ともに高くなってしまい、多くのウイスキー蒸留所がシェリー樽不足の問題を抱えています。
ウイスキーの熟成に使用されるシェリー樽の種類は下記。
オロロソシェリー樽
シェリー酒の中でも辛口に分類される、オロロソの熟成に使用された樽。
シェリー樽としてウイスキーの熟成に再利用された際には、ナッツ、熟したカシスやプルーンなどの黒い果実など、深みのある濃厚な味わいを原酒に付与されると言われています。
ウイスキーに使われるシェリー樽として、ペドロ・ヒメネス樽と並び最も主流な種類の1つです。
ペドロ・ヒメネスシェリー樽(PX樽)
シェリー酒の中で極甘口に分類される、ペドロ・ヒメネスの熟成に使用された樽。
シェリー樽としてウイスキーの熟成に再利用されると、カシスやプルーンなどの黒い果実、干しぶどう(レーズン)、甘いシロップなど、非常に甘い風味を原酒に付与されると言われています。
ウイスキーに使われるシェリー樽として、オロロソ樽と並び最も主流な種類の1つ。
フィノシェリー樽
シェリー酒の中で辛口に分類される、フィノの熟成に使用された樽。
シェリー樽としてウイスキーの熟成に再利用された際は、強いスパイス感、ウッディな木の香味、ほんのり甘い果実風味が原酒に付与されます。
フィノシェリー樽原酒が使われている有名なウイスキーとしては「カバランソリスト フィノシェリー」がありますが、世界的に評価が高く、数多くあるカバランシリーズの中でも最高傑作と言われています。
マンサニージャシェリー樽(マンサニーリャ)
シェリー酒の中で辛口に分類される、マンサニージャの熟成に使用された樽。
日本ではマンサニージャという名称で知られていますが、海外ではマンサニーリャという表記が用いられることも。
シェリー樽としてウイスキーの熟成に使用された際は、ほのかにフルーティな香り、スッキリとした爽快な風味、塩辛い海の風味などを原酒に付与されると言われています。
日本ではマルス酒造が生産している「越百マンサニージャ カスクフィニッシュ」などでマンサニージャ樽原酒が使用されています。
アモンティリャードシェリー樽(アモンティジャード)
シェリー酒の中で辛口に分類される、アモンティリャードの熟成に使用された樽。
日本ではアモンティリャードという名称が一般的ですが、海外ではアモンティジャードと呼ばれることもあります。
アモンティリャードの味わいはフィノとオロロソの中間の味とされており、特徴的にはフィノを長期熟成したような辛くも柔らかな味わい。
シェリー樽としてウイスキーの熟成に使用された際は、甘みの強いナッツ感、フレッシュな酸味、辛くドライな風味を原酒に付与されると言われています。
モスカテルシェリー樽
シェリー酒の中で極甘口に分類される、モスカテルの熟成に使用された樽。
シェリー樽としてウイスキーの熟成に使用された際は、完熟したカシスやプルーンなどの黒い果実、干しぶどう(レーズン)、フレッシュな果実の酸味を原酒に付与されると言われています。
パロ・コルタドシェリー樽
シェリー酒の中で辛口に分類される、パロ・コルタドの熟成に使用された樽。
シェリー樽としてウイスキーの熟成に使用された際は、甘くも辛い、豊かな果実風味をしっかりと感じる濃厚な味わいを原酒に付与すると言われています。
パロ・コルタド樽での熟成を終えた原酒は濃い茶色に変化する特徴があり、数多くあるシェリー樽の中でも、最も色が濃い点も特徴の1つです。
ワイン樽
シェリー樽以外にも、ワインの熟成に使用した樽はその後に古樽としてウイスキーの熟成に再利用されることが非常に多いです。
シェリーを除くそれらの樽はワイン樽という名称で知られており、多くのウイスキー蒸留所がワイン樽で熟成した原酒を使用しています。
ワイン樽は原酒を熟成する期間が短くても、若い嫌なアルコール感を消してまろやかな味わいに変化させると言われており、原酒不足の問題を抱えているジャパニーズウイスキーの蒸留所でも重宝されています。
ワイン樽に使われている木材は、ヨーロピアンオーク、フレンチオーク、アメリカンホワイトオークなどさまざま。ただしウイスキーの古樽として利用されるワイン樽はヨーロピアンオーク、もしくはフレンチオークで作られている物が多い傾向にあります。
これからウイスキーの熟成に利用されることがあるワイン樽を簡単に紹介。
ポートワイン樽(ポートパイプ)
ポートワインはポルトガルの「ドウロ地方」で作られている酒精強化ワイン。
世界3大酒精ワインの1つとしても知られています。
ポートワインは作り方によって甘口・中辛口・辛口の3種類に別れており、空き樽がウイスキーの熟成に再利用される際も、原酒に付与される甘さがそれぞれ少し違うと言われています。
3種類それぞれがウイスキー樽として使われた際に原酒に付与する特徴は下記。
甘口ポートワイン:甘口、ドライフルーツ、スパイス
中辛口ポートワイン:控えめな甘さ、ドライフルーツ、スパイス
辛口ポートワイン:辛口、ドライフルーツ、スパイス
もちろん作っているワイナリーによって1つ1つ味が違うため、上記以外の特徴が原酒に付与されることもあります。なので、 “共通する特徴がこれ” くらいに考えてくれれば大丈夫です。
ルビー・ポートワイン樽
ルビー・ポートは先ほど紹介したポートワインの1種ですが、他のポートワインとは違った特徴を持つこともあり、ウイスキーの熟成に使用する際はルビー・ポート樽と区別された名称が用いられることも多いです。
ルビー・ポート樽がウイスキーの熟成に使用された際は、イチゴやカシスを彷彿とさせる豊かな果実味を原酒に付与すると言われています。
マデイラワイン樽(マデイラドラム)
マデイラワインは、ポルトガル領の島「マデイラ島」で生産されている酒精強化ワイン。
世界3大酒精ワインの1つとしても知られています。
マデイラワイン樽(マデイラドラム)がウイスキーの熟成に使用された際は、甘さの強いほんのりとした果実味、スパイス感と少しドライな辛味などが原酒に付与されると言われています。
マルサラワイン樽
マルサラワインはイタリアの「シチリア島」で生産されている酒精強化ワイン。
マルサラワインには甘口と辛口が存在しますが、ウイスキーの熟成に使用される場合は甘口の空き樽が利用されることが多いです。
マルサラワイン樽がウイスキーの熟成に使用された際は、スパイスを含む複雑なアロマ、甘い味わいなどを原酒に付与すると言われています。
ミュスカワイン樽
ミュスカワインはフランスを中心に世界中で生産されている酒精強化ワイン。
その名のとおり「ミュスカ」というぶどうを材料に作られる白ワインですが、日本ではミュスカという呼び名よりも、マスカットという名称で親しまれています。
ミュスカワイン樽がウイスキーの熟成に使用された際は、ガムシロップを想像させる非常に強い甘み、レーズン、カシスなどの風味が原酒に付与されると言われています。
ソーテルヌワイン樽
ソーテルヌワインはフランスのガロンヌ川 左岸周辺で生産されている極甘口の白ワイン。
貴腐ぶどうと呼ばれる糖度の高いぶどうを材料に作られているため、貴腐ワインの1種としても知られています。
ソーテルヌワイン樽がウイスキーの熟成に使用された際は、甘く軽やかな果実味、柑橘類の皮を彷彿とさせる酸味などを原酒に付与すると言われています。
トカイワイン樽
トカイワインはハンガリーのトカイ地方周辺で生産されている白ワイン。
甘口から辛口まで幅広くありますが、ウイスキー樽として使われるのは貴腐ぶどうを材料にした極甘口の貴腐ワインの樽が最もメジャーです。
トカイワイン(貴腐ぶどう)樽がウイスキーの熟成に使用された際は、非常に甘い柑橘類やマンゴーなどのスッキリとした新鮮な果実味を原酒に付与すると言われています。
シャルドネワイン樽
シャルドネワインは日本を含め世界中で生産されているかなりメジャーな白ワイン。
シャルドネ樽がウイスキーの熟成に使用された際は、トロピカルフルーツの酸味を感じるキレのある味わいを原酒に付与すると言われています。
ミュスカデワイン樽
ミュスカデワインはフランスのロワール川 下流周辺で生産されている白ワイン。
酒精強化ワインのミュスカワインと非常に名前が似ていますが、まったくの別物。味の特徴も全然違います。
ミュスカデワイン樽がウイスキーの熟成に使用された際は、フローラルな花の香り、柑橘類や桃の甘くフルーティな味わいを原酒に付与すると言われています。
ボルドーワイン樽
ボルドーワインはフランスのボルドー地方で生産されているワイン。
タイプ的には白・赤・ロゼ・スパークリングなど様々な種類が存在しますが、特に生産数が多いのはボルドーの赤ワイン。ウイスキーの熟成に古樽として使用される際もほとんどが赤の空樽です。
ボルドーワイン樽(赤)がウイスキーの熟成に使用された際は、ベリーなどの赤い果実を彷彿とさせる重厚な強い味を原酒に付与すると言われています。
ブルゴーニュワイン樽
ブルゴーニュワインはフランスのブルゴーニュ地方で生産されているワイン。
最高級のワインとして有名な「ロマネ・コンティ」もこのブルゴーニュワインに含まれます。
タイプ的には白・赤のどちらも存在しますが、古樽としてウイスキーの熟成に使用される場合は多くが赤の空樽。
ブルゴーニュワイン樽(赤)がウイスキーの熟成に使用された場合には、豊かな果実味、甘さ控えめでスッキリとした辛口な風味を原酒に付与すると言われています。
ブルゴーニュ地域圏の事を英語で「バーガンディ」と呼ぶため、稀にバーガンディ樽という名称が用いられることもあります。
バローロワイン樽
バローロワインはイタリアのピエモンテ州にある「バローロ村」周辺で生産されている高級赤ワイン。
バローロワイン樽がウイスキーの熟成に使用された際には、タンニン(渋み)を含むドライフルーツの果実味と重い香りを原酒に付与すると言われています。
アマローネワイン樽
アマローネワインはイタリアのヴェネト州にある「ヴェローナ地区」のみで生産されている最高級の赤ワイン。
アマローネワイン樽が古樽としてウイスキーの熟成に使用された際は、タンニン(渋み)を感じるレーズン、熟した果実、重みのある辛口な味わいを原酒に付与すると言われています。
アマローネワイン樽で熟成された原酒が使われているウイスキーとしては、日本でも大人気の「アラン アマローネ・カスク」などがあります。
ラム樽(カリビアンラムカスク)
近年あらゆる国のウイスキー蒸留所で注目されている古樽がラムカスク。
日本でも大人気の「グレンフィディック」や「デュワーズ」なども、ラムカスクで熟成をおこなったウイスキーを販売しています。
ウイスキーの熟成に利用されるラム樽はホワイトラム、ダークラムの2種類があり、それぞれ原酒に付与する特徴は下記。
ラム樽(白):甘口、蜂蜜、バニラ、トロピカルフルーツ、アーモンド
ラム樽(黒):甘口、シロップ、黒い果実、オークの香り、カラメル、バニラ
ラム樽に使われている木材としては、アメリカンホワイトオークが大半を占めています。
ビール樽(IPA樽)
近年アイルランドのアイリッシュウイスキー蒸留所を筆頭に、古樽として利用され始めているのがビール樽。
ビール樽が古樽としてウイスキーの熟成に使用された際、原酒に与える影響は予想が難しいと言われており、状況によってチョコレート、コーヒー、香ばしい麦、シトラス、りんごなどあらゆる風味を与える可能性があります。
日本でも「イチローズモルト」や「駒ケ岳」などがビール樽で熟成したウイスキーを販売しており、今後どんどんジャパニーズウイスキー界でも増えていくものと思われます。
ビール樽に使われている木材はアメリカンホワイトオークが多いようですが、まだ古樽としての歴史が浅いので何とも言えないのが現状です。
ブランデー樽(コニャック樽)
近年スコットランドや日本のウイスキー蒸留所で需要が高まってきているのがブランデー樽。
ブランデーの生産量はフランスが圧倒的に多いこともあり、ブランデー樽に使われる木材の多くはフランス産のフレンチオーク(セシルオーク)。
日本でも大人気の「グレンリベット」、あらゆるコンペティションで賞を総なめにしている台湾の「カバラン」などがブランデー樽で熟成したウイスキーを販売しています。
ブランデーにもいろいろな種類が存在しますが、古樽としてウイスキーの熟成に利用される場合、多くはコニャックという種類のブランデーの空樽。そのためコニャック樽という表記を用いる蒸留所も多いです。
ブランデー樽がウイスキーの熟成に使用された際は、熟したレーズン、ウッディなスパイスなどリッチで濃厚な風味を原酒に付与すると言われています。
その他のウイスキー樽
その他にもテキーラ樽、カルヴァドス樽など、マニアックなお酒の古樽をウイスキーの熟成に使用している蒸留所も存在します。
日本ではジャパニーズウイスキー「あかし」を生産する江井ヶ嶋蒸留所が、コニャック樽、テキーラ樽、カルヴァドス樽などの古樽で熟成したマニアックなシングルモルトを販売しています。
ウイスキー樽 サイズの種類
ウイスキー作りに関してとても重要なのが樽のサイズ。
樽の木材の種類・古樽の種類によって風味が変わるのは当然ですが、同じ木材・同じ古樽を使用しても樽のサイズによって風味は大きく変わるのです。
一般的に小さな樽は熟成速度が早く、樽の影響を強く受けると言われています。(小さな樽のほうが原酒と樽材の接触面積が多いため)
大きな樽は熟成速度が遅いものの、上品に熟成されて優しい風味を持つと言われています。そして一度に多くの原酒を生産できる点もメリットの1つ。
生産コストを考えるのはもちろんのこと、まろやかで飲みやすいウイスキーを作るのか、濃厚でリッチなウイスキーを作るのかによって樽のサイズを考えなくてはいけません。
ウイスキー樽のサイズは豊富に存在しますが、ここでは使用頻度の高いサイズだけをピックアップして紹介したいと思います。
バレル(バーボンバレル)
容量約180〜200リットルサイズの樽。
バーボンとカナディアンウイスキーの熟成のために作られる樽で、木材はアメリカンホワイトオーク。
バーボンなどの熟成を終えた後、古樽としてスコットランドや日本に販売されて再利用されています。
ホグスヘッド
容量約230〜250リットルサイズの樽。
前章で紹介したバレルを解体、その後いくつかのバレルを組み直して作られています。
“豚一頭分の重さ” ということからホグスヘッドという名称に。
日本でもサントリーが所有する山崎蒸留所、白州蒸留所などで活躍しているサイズの樽です。
バット(シェリーバット)
容量約480〜500リットルサイズの樽。
主にシェリー酒の熟成に使用されるサイズで、役目を終えた後に古樽としてスコットランドや日本で再利用されています。
樽に使われている木材は多くの場合ヨーロピアンオーク。(数は少ないがアメリカンホワイトオークも存在する)
パンチョン
容量約480〜520リットルサイズの樽。
アメリカンホワイトオークを木材に作られるずんぐりとした形の樽。
稀に300リットルサイズのパンチョン樽も存在するようですが、一般的には480〜520リットルが主流です。
ポートパイプ
容量約650リットルサイズの非常に大きな樽。
ポートワインの熟成のために作られた樽で、木材は多くの場合ヨーロピアンオーク。
役目を終えた後にスコットランドや日本で再利用されています。
ウイスキー樽に関する知識
ファーストフィル、セカンドフィルとは
ウイスキー樽はしっかりと手入れをすれば100年間近く持つと言われています。そしてその長い生涯の中で1度目に使われることをファーストフィル、2度目の熟成で使われることをセカンドフィルと言います。
バーボン樽やシェリー樽など古樽の場合も、最初に再利用される際がファーストフィルとなります。
例:ウイスキー樽の生涯
回数 | 熟成期間 | 樽の年齢 |
ファーストフィル(1度目) | 20年 | 20歳 |
セカンドフィル(2度目) | 12年 | 32歳 |
サードフィル(3度目) | 30年 | 62歳 |
ファーストフィルが最も原酒に対する影響(樽から抽出される成分)が強く、セカンドフィル、サードフィルになるにつれ原酒に与える影響が少なくなっていきます。
ミズナラ樽のように原酒に与える影響が強すぎる木材の場合は、ファーストフィルよりもセカンド、サードのほうが好まれることもあるので、一概にファーストだから良いというわけではありません。
ちなみに樽の成分が抽出されるのは最大でもフォースフィル(4度目)までと言われており、それ以降は木材の風味を完全に失ってしまいます。
マリッジとフィニッシュは別物
ウイスキーの熟成に関するワードとしてよく使われる用語にマリッジ(後熟)とフィニッシュ(追熟)がありますが、この2つは似ているようで別物です。
マリッジとは
熟成された原酒同士を混ぜ合わせてから、再び樽に詰めて熟成させる場合はマリッジ(後熟)になります。
フィニッシュとは
ブレンドの前に熟成途中の原酒を他の樽に移し替え、再熟成する場合はフィニッシュ(追熟)となります。
未完成の原酒を再熟成するのがフィニッシュ(追熟)、完成した原酒を再熟成するのがマリッジ(後熟)と覚えると分かりやすいかと思います。
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