この記事ではウイスキーの香りの分類、テイスティングでよく使われる香り一覧を紹介しています。
ウイスキーのテイスティングレビューに興味がある方は参考にしてみてくださいね!
ウイスキーの香りを表現する4種類の系列
ウイスキーのテイスティングで使われる香りは、フルーツ名、スパイス名など様々ですが、大きく分けて4種類の系列に分類されています。それが下記。
- 原材料由来のモルティ
- 樽の素材が生み出すウッディ
- 化学反応が生み出すエステリー
- 泥炭由来のスモーキー
ウイスキーが持つ香りは銘柄ごとに違い、その匂いの数は無限大。しかしどんな香りを放っていたとしても上記の4系列のどれかに分類することが可能です。
これから4系列の特徴、その系列に含まれるフレーバーを紹介していきます。
モルティ
ウイスキーの原材料から生まれる香りをモルティと表現します。
ウイスキーの原料となる大麦麦芽、トウモロコシ、ライ麦などの穀物が由来となって生まれる香り。モルティに分類される代表的なフレーバーとしては下記です。
- ↓穀物由来の香り↓
- 干し草
- じゃがいも
- 麦芽
- ビスケット
- コーン
- ↓穀物の焙煎時に生まれる香り↓
- トースト
- チョコレート
- コーヒー
- 甘草
- ↓酵母由来の香り↓
- グレービー
- ソーセージ
- パン
- ↓後溜(テイル)が生む香り↓
- 革
- タバコ
- 紅茶
- バター
- ろうそくの蝋
- 魚
後溜(テール)とは大麦麦芽からニューメイクを作る際に抽出する蒸留液の最後の部分。
テールはアルコール度数が低く、オイル成分も含んでいるため熟成に向いておらず、基本は原酒として使われることがない原液。
どこまで後溜と捉えるかは蒸留者次第なので、銘柄によってはテール特有の香りが含まれている物も存在します。
ウッディ
ウイスキーの熟成に使用する樽から生まれる香りをウッディと表現します。
樽の素材となる木材から付与される香りなので、使用する木材ごとに違う香りになるのが特徴。他のお酒の熟成に使用した樽(シェリー樽など)をウイスキーの熟成に使った際に生まれる香りもウッディに分類されます。
ウッディに分類される代表的なフレーバーは下記。
- ↓お酒由来の香り↓
- マデイラワイン
- シェリー酒(レーズン)
- ↓スパイス系の香り↓
- シナモン
- グローヴ
- コリアンダーの種
- ナツメグ
- 黒胡椒
- 生姜
- アニス
- ↓森林系の香り↓
- 松
- ヒマラヤ杉
- サンダルウッド
- オーク
- 白檀(日本特有)
- 伽羅(日本特有)
- ↓ナッツ系↓
- クルミ
- ヘーゼルナッツ
- アーモンド
- ココナッツ
- ↓木材の成分の香り↓
- バニラ
- ハチミツ
- キャラメル
エステリー
樽から抽出される成分とアルコールが化学反応を起こして生まれる香りをエステリーと表現します。
エステリーに含まれる香りはフルーティ系、フローラル系、ハーブ系など多くの種類が存在するので、4系列の中で最も出現頻度が高い香り。エステリーに分類される代表的なフレーバーは下記です。
- 〜フルーティ系〜
- ↓シトラス系の香り↓
- ライム
- レモン
- グレープフルーツ
- オレンジ
- オレンジの皮
- ↓トロピカルフルーツ系の香り↓
- グアヴァ
- メロン
- マンゴー
- バナナ
- パイナップル
- パッションフルーツ
- ↓ナシ状果系の香り↓
- 洋梨
- 青リンゴ
- リンゴ
- ↓核果系の香り↓
- 桃
- さくらんぼ
- プラム
- ↓赤いベリー系の香り↓
- ラズベリー
- カシス
- ブラックベリー
- ↓ドライフルーツ系の香り↓
- ドライプルーン
- ドライイチジク
- ドライアプリコット
- 〜↓フローラル系↓〜
- オレンジの花
- バラ
- ヘザー
- ゼラニウム
- ラベンダー
- スミレ
- 〜↓ハーブ系↓〜
- 芝生
- シダ
- ミント
- ユーカリの葉
- ビャクシン属
- カシスの葉
- ベイリーフ
- 干し草
スモーキー
ピート(泥炭)を使用することで生まれる香りをスモーキーと表現します。
ウイスキーの製造工程で大麦麦芽を乾燥させる際に、ピート(泥炭)を燃やした煙で乾燥させると、スモーキーな香りを持つ麦芽が作られます。スモーキーに分類される代表的なフレーバーは下記。
- 泥炭(ピート)
- 土の匂い
- 木のコケ
- 薬草
- 包帯
- ベーコン
- タール
- ゴム
- 灯油
- 火打石
- 貝
- 海藻
- ヨウ素
- 魚
複数に分類される香りも存在する
ここまでウイスキーの香りは4系列のどれかに分類されると解説してきましたが、稀に2つの系列に属している香りも存在します。
2系列に属している香りの有名どころとしては、煙、魚、干し草、ゴムなど。
煙の香りはピート(泥炭)由来の物もあれば、バーボン樽の内側を焦がすチャーという工程由来の物もあるので、スモーキーとウッディの2系列に属していると言えます。
魚の香りは後溜(テール)由来とピート由来の物があるため、モルティとスモーキーの2系列。
干し草の香りは原材料の麦芽由来、もしくはエステリーが生み出すハーブ系の香り由来の場合があるので、モルティとエステリーの2系列。
ゴムの香りはシェリー樽由来の物、もしくはピート由来の場合があるため、ウッディとスモーキーの2系列となっています。
【例】有名ウイスキーのアロマチャート
ソムリエやブレンダー達も訓練に使用している本格的なアロマキット「アロマスター88」に記述されている有名ウイスキーのアロマチャートを2つほど紹介しておきます。
ジョニーウォーカーブラックラベル12年
樽の素材から生まれるフレーバー
シェリー酒、ナツメグ、黒胡椒、松、ヒマラヤ杉、オーク、クルミ、アーモンド、ココナッツ、バニラ、ハチミツ、キャラメル、煙
熟成のエステリーが生み出すフレーバー
フルーツ系
ライム、レモン、オレンジの皮、パイナップル、洋梨、リンゴ、プラム、ドライイチジク
ハーブ系
芝生
麦芽(モルト)が生み出すフレーバー
麦芽、チョコレート、コーヒー、甘草
後溜(テール)が生みだすフレーバー
革
泥炭(ピート)によって生まれるフレーバー
煙、泥炭、土の匂い、ヨウ素
上記のすべての香りが、ジョニーウォーカーブラックラベルを構成するアロマチャートとなります。
シーバスリーガル18年
樽の素材から生まれるフレーバー
シェリー酒、シナモン、グローヴ、ナツメグ、黒胡椒、生姜、オーク、クルミ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、バニラ、ハチミツ、キャラメル、煙
熟成のエステリーが生み出すフレーバー
レモン、オレンジ、オレンジの皮、バナナ、洋梨、リンゴ、ドライアプリコット、ヘザー
麦芽(モルト)が生み出すフレーバー
麦芽、チョコレート、コーヒー
後溜(テイル)が生みだすフレーバー
タバコ、バター
泥炭(ピート)によって生まれるフレーバー
ヨウ素、木のコケ、土の匂い、泥炭、煙
上記のすべての香りが、シーバスリーガル18年を構成するアロマチャートとなります。
テイスティングは自分が感じた香りを伝えればOK
今回紹介したウイスキーのテイスティングでよく使われる香りはあくまで一例です。
実際にはフルーツの種類、植物の種類だけ香りの数も存在するので、数十万種類のフレーバーが存在することになります。
ウイスキーはもともと海外発祥の洋酒ということもあり、日本人からすると「ベイリーフなんて聞いたこともない。チコリータの進化後?」なんて人が多いのではないでしょうか。
しかし、日本にも日本特有の干し柿やお線香など、海外の人には伝わりづらい香りが多く存在します。
ウイスキーのプロですら、同じウイスキーをテイスティングしても1人1人まったく違うコメントを残すわけですから、難しく考えず自分が感じた香りを表現して楽しむのがウイスキーテイスティングの醍醐味ではないかと思います。
なので、この記事で紹介した香りは “覚えておくと便利な香り一覧” くらいに思っていただけると幸いです!
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